この世界にはケダモノという不思議な生き物がいる。
彼らには人と同じように心があって、個性がある。人間の世界にまぎれて暮らしている者もいるし、ケダモノの世界で過ごす者もいる。
いつもの通り道にある路地裏、古びて使われなくなった床屋、クローゼットの中、屋根裏、さまざまなところに門は隠されていて、ケダモノたちは人間界とケダモノ界を自由に行き来する。
彼らは人間が大好きだ。ケダモノと仲良くなった人間はケダモノの世界に招待されたりもする。絆を結べば、人とケダモノは繋がり、生涯にわたってその人間を守ったり、幸せを与えてくれるだろう。
ケダモノは人よりも多く存在して、広大な土地と王国があり、ケダモノの世界は思いやりと平和であふれていた。
だが近年ケダモノの世界も揺らいでいた。ケダモノの世界の王国が悪いケダモノの女王に乗っ取られてしまい、ケダモノたちは困っていた。
あるところにノーブルというわがままで傲慢なケダモノの王子がいた。
ノーブルは王国を乗っ取られたせいで両親や妹と生き別れてしまい、大変な出来事でノーブルは記憶を一部失った。だが妹のことだけは覚えていた。
ノーブルには王子としての誇りは微塵もなく、王国に帰る意思もなかった。ただ妹を探すためにノーブルクラフトというよろず屋をはじめ、ケダモノたちの悩みを解決する代わりに妹の情報を集めていた。
そこで妹と絆で繋がっていると思われる人間の少女モモのことを知り、孤児だった彼女をノーブルクラフトへ招き、アルバイトとして雇った。
さびれた人間の街の、古びて使われなくなった床屋は門であり、扉を開けるとそこはケダモノの世界。モモはケダモノたちの優しさに触れ、すっかりノーブルクラフトを気に入ったようだった。ただしそれはノーブルにとって迷惑そのものだった。
孤児として育ち兄までも失うが、それでも明るく前向きなモモ。みなから愛される王子として育つが、わがままで傲慢なノーブル。正反対の二人の不思議な日常がはじまった。
だがそんな二人を女王の手下のシークエンスが見張っていた。